ジョージ・ラッセルのインスタ投稿をきっかけに、アゼルバイジャンGPとバーレーンGP(今年はマレーシアで代替開催)の間に、世界王者ランド・ノリスら7人のドライバーが過ごした"男子旅"が明らかに。コースでは火花を散らすライバル同士は、休暇で何を語り合ったのか?

フォーミュラ1のドライバーたちは、プライベートを徹底して守る傾向がある。特に、グランプリとグランプリの合間、Netflixの人気ドキュメンタリーシリーズ『Drive to Survive』のカメラから離れた場所での過ごし方についてはなおさらだ。
しかし異例なことに、ジョージ・ラッセルがInstagramに投稿した写真をきっかけに、7人のドライバーがアゼルバイジャンGPとマレーシアGPの合間に行った休暇の模様が明らかになった。
モナコに住み、多くのレースに向けてニースから飛ぶドライバーを中心に、プライベートジェットを相乗りすることはよくある。多忙なF1スケジュールを考えると、バクーとマレーシアのレースの間に一度帰宅するのはあまり意味がないと判断したラッセル、ランド・ノリス、カルロス・サインツ、アレックス・アルボン、オリバー・ベアマンの5人は、マレーシア行きの便をシェアすることに決めた。
「僕たちは時々メッセージを送り合って、お互いのフライトに乗せてもらうことがあるんだ。飛行機をシェアした方が経済的にも効率がいいからね」と、カルロス・サインツはRoad & Track誌からこの旅行について聞かれた際に語った。「それに言うまでもなく、地球環境にとっても、それぞれが勝手に飛ぶより大人数で一緒に移動した方がいいでしょ」
7人が選んだのはランカウイ島しかし、その道中で計画が変更された。賑やかな大都市クアラルンプールへ直接飛ぶ代わりに、もう少し穏やかで静かな場所へ行こうということになったのだ。
一行は、人口わずか8万5000人のマレーシア沖の島、ランカウイ島へ向かうことに決めた。
「土曜の夜にバクーからマレーシア行きの便に乗ろうとしているドライバーたちがいるのを見かけてね」とサインツは振り返る。
「それでクアラルンプールへ直行するくらいなら『どこか別の場所に行かない?』って提案したんだ。サイクリングやジム設備が充実していてすごく良さそうな島のリゾートホテルを見つけたから、『4日間ずっと大都市のクアラルンプールに飛ぶより、少なくとも僕らにとってはあんまり面白くないし、この素敵なリゾートに行かない?』って言ったら、みんな『最高じゃん、行こうぜ!』って乗ってきたんだ。そうして土曜の夜、全員でその飛行機に飛び乗ってバクーからランカウイへと飛んだんだよ。バクーからランカウイなんて飛んだ人は過去に誰もいないんじゃないかな。一番謎なルートのフライトだよ……」
オスカー・ピアストリとガブリエル・ボルトレートは別のフライトを使っていたが、目的地を変更して他のメンバーと合流した。ノリスはこれまでにサインツ、ピアストリの両方とチームメイトだった経験があり、彼らとは仲が良いが、実際に一緒に休暇を過ごすというのは新鮮なことだったという。
世代が異なるベアマンとボルトレートは、年上の先輩たちほど親しいわけではなかった。それでも全員にとって、サイクリングやカートなどのアクティビティを楽しみながら一緒に過ごした週末は、充実した時間となった。
「普段のレース週末だと、お互いに会うことなんて滅多にないんだ」とサインツは語る。
「普段はそれぞれの仕事や予定があるから、今回一緒に過ごしたみんなと顔を合わせることすらほとんどない。だから、彼らとちゃんと時間を過ごせるなんて本当に珍しいことなんだ。それに僕たちが行った島はすごく楽しかったよ。小さな島に7人のF1ドライバーを送り込んで、彼らが最終的に何をするのか観察するわけだからね。ちょっとした社会実験みたいなものだったよ」
小さな島にF1ドライバー7人サインツは、あまりよく知らなかったメンバーと親しくなれたことを楽しんだようだ。
「個人としては、今まであまり知らなかったドライバーの性格やストーリーを知ることができて最高だった。彼らがどこから来て、どうして今の彼らになったのか、その理由なんかをね。絆を深めて、相手をより深く理解することができた。僕にとってはすごくクールな体験だったよ。みんな旅行の成果に大満足して帰ったと思う」
「僕たちはライバル同士だから、かなり特別な状況だよね」と、ラッセルもRoad & Track誌に対してコメントしている。「でも、同じスケジュールで世界中を旅しているわけだからね。あるスポーツのトップ22人が同じ日、同じ場所に集まって競い合うなんて、世界中探しても他のスポーツにはない。だから本当にユニークな機会だったよ。みんなで大笑いしたな。土曜の夜の5人でのフライトも面白かったし、僕の優勝を祝うのも手伝ってくれたんだ」
ピアストリとボルトレートはそのフライトには同乗していなかったが、ランカウイで合流した。
「本当に直前の決定だったんだ」とピアストリは語る。「でも、レースから離れてリフレッシュできてすごく楽しかった。サーキットを離れてこれだけ多くのドライバーが揃って一緒に過ごすなんて、滅多にないことだからね。結局のところ、僕たちはレースを愛する22人の男たちなんだ。もちろん、お互いにレースで戦っているから話しづらいテーマもあるけれど、普段語り合わない共通点もたくさんある。だからすごく良い時間だったよ。ずっとベッタリ一緒にいたわけじゃなくて、それぞれの時間を過ごすこともあったしね。ゴーカートのコース上では違ったかもしれないけど! 本当に楽しかったよ」
レンタルカートで大混乱この旅行の最大のハイライトは、レンタルカートでのレースだったようだ。ノリスは参加を見送ったが、残りのメンバーにはサインツの友人で元マノアF1ドライバーのロベルト・メリも加わり、誰もが口をそろえて「大混乱」だったと振り返るセッションが繰り広げられた。そして、セッションを予約したラッセルは、なんと新品タイヤが装着されたカートを手に入れて他のメンバーを苛立たせたのだ。
「『競争的』という言葉は正しくないと思うな」とサインツは笑う。「だって途中から、誰も勝つことなんてどうでもよくなったんだから。みんな『いかにカオスを作れるか』に夢中になっていたよ。コースはあったんだけど、最終的に存在しない別のコースを作り出しちゃってね……スチュワードが見たら到底納得しないような、面白いレーシングラインを走り回っていた。ルールが存在しないF1ドライバー7人の世界がどうなるのかを見られたのは面白かったよ。控えめに言っても興味深い光景だったね」
「面白かったのは、最年少のオリーとガビ(ボルトレート)の存在だね。彼らは他の何よりも『やんちゃな弟』って感じだった」とアルボンは語る。「色んな意味で弟特有の破天荒さを持っているから、コース上では危険物扱いして関わらないように必死だったよ!」
ラッセルも「カートはちょっと歯止めが効かなくなって修羅場化したよ」と認めつつ、「でも地元のマレーシアの人たちがペトロナス愛から、僕に新品タイヤの付いた良いカートをくれたんだ。あれはありがたかったね……」と明かした。
サーキットの外では「普通の人間」ノリスはカート大会こそ欠席したものの、他のメンバーと同様にこの旅行を満喫した。
「ヘルメットを被るときと、プライベートな時間や生活は切り離すことができると思うんだ」と、ノリスは語る。「ヘルメットを被ると、全く別の自分になる。自分の中に2つのバージョンがあるようなものさ。だから、レースから離れた場所で彼らと少し時間を過ごせたのは良かったよ。彼らのことは元々よく知っていたけれど、みんながカートをやっている間、『ここは無理に一緒に過ごさなくてもいい時間だな』と思ってさ。自分ひとりの時間を確保して、好きなことをするのも最高だった。そういう時間も僕の人生には大切なんだ」
数年前にマクラーレンのザック・ブラウンCEOは、インディカーのドライバーたちが仲良しであることに対して不満を漏らし、「仲が良すぎるとコース上で激しく戦えなくなる」と自身の自伝でも繰り返し主張していた。これに対しノリスはこう反論する。「仲良くなると優しく走るようになる、という意見には同意できないな。むしろ逆になることだってある。サーキットを離れれば普通の人間として過ごせるし、少しのオフタイムでみんなの違った一面を見られるのは、純粋に素晴らしいことだと思うよ」
Source / Road & Track
※この翻訳は抄訳である。